「初めて人に対しておこなわれた臨床試験から日本での承認までわずか5~6年で、対象患者数も少ない。また承認はされたものの海外の第3相試験はまだ進行中という状況です。新しい治療なので、安全かつ慎重に進めるために、施設要件を設けています」

国立がん研究センター東病院副院長 林 隆一 医師
国立がん研究センター東病院副院長 林 隆一 医師

 本誌では日本頭頸部外科学会認定の専門医・指導医所属施設を対象に、22年11月現在、頭頸部アルミノックス治療を実施しているかを調査。60件の病院から実施していると回答を得て、その病院には21年の治療件数を記入してもらった(週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2023』参照)。その結果、治療件数は1~2人、あるいは0人という病院も多かった。

 林医師は治療件数が少ないことについて「治療の適応がとても厳しいことも理由」と話す。

「まず根治的な治療がすべて終了していなければなりません。さらに治療対象の病変は進行・再発がんで、『切除不能』というのが一つの条件です。一般的には頸動脈に浸潤がある場合に切除不能とされるため、治療を受けられると思いきや、治療後の出血の危険性から『頸動脈浸潤があると治療の対象外』なんですね。そのあたりも各医療機関での件数が伸びない要因になっていると思います」

■小さい腫瘍が縮小・消失 縮小後の増大や再発も

 アルミノックス治療に保険が適用されてから2年以上が過ぎた今、どの程度の治療効果が出ているのだろうか。

「全国的な集計はまだおこなわれていません。我々の印象からすると比較的表面に近い小さい腫瘍で、縮小や消失する効果が出ています。だんだん縮小するというよりも、短い期間に腫瘍の縮小や壊死が認められることも多い。一方、すべての治療に言えることですが、非常に大きい腫瘍の治療は難しいと感じています」

 治療効果の判定が難しいという課題もある。治療でいったん腫瘍が消失しても、しばらくするとまた出てくることがあるからだ。林医師はこう話す。

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1年近く再発がなく、制御されている患者も