「保険では4週間以上空けて4回まで治療できるので、再発するたびに治療を繰り返すことも少なくありません。1年近く再発がなく、制御されている患者さんも出てきています」
しかし大きい腫瘍では縮小するものの再び増大し、治療を繰り返してもやがて病勢を抑えきれなくなるケースが多いという。
「これまで受けた治療などによっても効果に違いが出ている可能性はありますが、今はまだ患者数が少なく、まとまった解析はおこなわれていません。今後、多数例での分析が進めば、『どういう腫瘍に効果があるのか』といったことがわかってくるでしょう」
なお、現段階でアルミノックス治療が受けられるのは、根治治療の終了した進行・再発がんの患者に限られる。しかしすでに手術や放射線、抗がん剤などの治療が終わって再発している患者は、アルミノックス治療のような局所の治療のみでは制御しきれないのが現実だ。
「現在は併用療法の実施は認められていません。しかし、今後免疫チェックポイント阻害薬を併用するなど、全身療法が併用できるようになれば、治療成績は変わると思います」
さらに林医師は、
「治療の選択肢がなくなった患者さんにとって、からだに大きな負担をかけずに実施できるこの治療は大きな希望になります」
とした上で、こう続ける。
「この治療をしている医師の多くは小さい腫瘍のほうが良い効果を得られることを経験してきているので、『もっと早い段階で使えれば』という思いもあります。早期に展開するには臨床試験の実施が必要になりますが、将来的に適応は広がっていくと思います」
■食道がんや胃がんなど頭頸部以外のがんにも期待
アルミノックス治療に使用する薬剤はEGFRにくっついて効果を発揮するため、頭頸部がんでもEGFRを発現しないがんには効果がない。また光が届かない位置にあるがんも治療はできない。林医師はこう言う。
「自分が治療の対象になるかどうか、主治医に聞いてみてください。今は全国に治療を実施できる病院があるので、主治医から地元の病院に紹介してもらって相談するのもひとつの方法です。根治治療を終えて再発してきた時点で、一度相談しておくといいでしょう。学会の委員会で検討が必要ですが、できるだけ早く治療を開始できる態勢が整えられています。その段階では『ほかの治療を選択したほうがいい』という結論になったとしても、将来アルミノックス治療が必要になったときにスムーズに導入できます」