中国は「ゼロコロナ政策」を2022年12月に大幅緩和。市町村の封鎖を解除し、海外からの入国者に義務づけていた検査や隔離措置も撤廃した。めまぐるしく方針転換がなされるコロナ禍の中国で、日本からの留学生はどのような大学生活を送っていたのだろうか。清華大学で語学留学中の佐藤春香さん(仮名)と、長年中国の大学で教鞭を執り、現地の状況をよく知る加藤隆則氏に話を聞いた。
佐藤さんが中国留学への準備を始めたのはコロナ禍のまっただ中だった。
「それまではユーチューブを見たり、推しの俳優さんの動画を見たりして中国語を勉強していました。でもやはり独学では限界があると感じ、語学留学を検討しました」
■奨学金を得て、アジアトップ大学へ
佐藤さんが見つけたのは語学留学ができる日中友好協会の奨学金。しかし当時は留学ビザの発給も中止されており、渡航はままならない状況だった。
「ただ、韓国人には留学ビザが下りていたんです。22年になってから日本人にもビザが発給されるといううわさが流れ、思いきって志願することにしました」
大学の成績や論文、学習計画などの書類を提出し、面接に臨み無事合格。受け入れ先も第一志望の清華大学に決まった。英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)による2023年版の世界大学ランキングで、アジア圏トップに躍り出た名門大だ。
会社を辞め退路を断っての決断だったが、2月に内定がでているのになかなか受け入れを許可する通知が届かない。22年の8月末にやっとビザ発給の通知が届き、9月にあわただしく中国に旅立った。政府が手配した隔離施設での10日間の隔離に加え、清華大学のホテルで4日間、寮の個室で7日間、計3週間に及ぶ隔離生活をおくる。
「隔離施設に比べて、大学のホテルや寮は食事などの待遇がかなり良かったですね。部屋に着いたらウェルカムのお菓子が置いてあり、サポートも充実していて孤独を感じずにすみました」
中国のキャンパス事情に詳しい加藤氏はこう話す。
中国各地の主要大学は広大で学生は全国から集まりますから、ほとんどの学生がキャンパスにある寮で生活します。朝8時から始まり夜9時まで続く授業もあるので、学生にとってもそのほうが都合がいい。友人とのつながりも宿舎で生まれることが多いです」
キャンパスにはスーパーやコンビニ、美容院や病院もあるので、キャンパスが封鎖されたとしても、十分生活はできるという。