佐藤さんが合わせて20日間余りの隔離を終えいよいよ教室に行くと、誰もマスクをしていないことに驚いた。
「北京ではまだはやっていなかったですし、隔離された状態で、感染者がいないのならマスクをするまでではない、という考え方なんです」
佐藤さんは、韓国人留学生のルームメートとすぐに仲良くなった。週に4回、1コマ100分の授業を2コマ受け、その後は同級生たちと食堂へ行ってランチをしたり、図書館で一緒に勉強したりして過ごす。日本語を学ぶ中国人学生を紹介され、一緒におしゃべりをしたり、お互いの文章を添削したりして語学力を磨いた。
「やはり対面授業は充実しています。発音の間違いをすぐその場で教師に直してもらったり、気軽に友達とコミュニケーションをとったりできました」
当時、北京市内は自由に行動できたため、繁華街に出かけてお茶を飲んだり、ちょっとした買い物を楽しんだりしていたという。
■突然の寮ロックダウンでも、大学のサポートは充実
しかし11月中旬から風向きが変わってきた。北京でもぽつぽつと感染者が出始め、キャンパスからの外出が禁止に。
「5~6月ごろの政策が一番厳しい時期のロックダウンを経験した同級生がいて、またそういう事態になるかもしれない、と不安がっていました」
同時期に大学でも感染者が出て、教員やスタッフ、学生ごとに区画や食堂が分けられ、キャンパス内でも移動が制限されるようになった。11月下旬には対面授業からまたオンライン授業に。12月に入ると、佐藤さんの寮の学生にも感染者が現れ、その日は棟から出ることが禁止された。
「ある日突然、寮が騒がしくなり、どうやら隔離が始まったようだぞ、と。部屋の前に隔離グッズが配られていました。医療用マスクやゴム手袋、抗原検査のキット、水、カップラーメンなどが入っていましたね。大学のスタッフの方がZoomで相談に乗ってくれたりして、清華大の支援はかなり手厚かったです。ここにいれば最悪コロナになってもサポートが受けられるだろうという安心感はありました」