堤:ま、確かにそうだな。

──ちなみに今まで何回くらい読みました?

橋本:もう何十回と読みました。

堤:お~、えらい。

橋本:負けず嫌いなので、あまりにも分からなくて気合が入りましたね(笑)。

──まだ稽古前ということですが、台本を読んでから稽古までの間って具体的にどうやって役作りをするのでしょう?

二人(同時に)役作りはしない。

堤:わかんないもん、だって。

橋本:そうですよね。

堤:もちろん、こういうセリフの言い方で、こういう人格でとか、自分なりにイメージはしていきますが、演出家と話し合って自然に形になっていくもの。あまり作り込んでいったら、全然違うぞってときに修正しにくいし。

橋本:イワノフも、ちょっとクレイジーな人間ですけど、それだけにとらわれると違うと思って。自分と演出家さんのイメージがバチッとハマったときに役ができると思っています。

堤:特に今回はウィル・タケットさんというイギリスの演出家なので、しっかりコミュニケーションをとって、みんなで作っていくと思いますから。

橋本:稽古が始まったら最初の1週間は話し合いをしよう、と言われましたね。

──日本の演出家とはやり方が違うんですか?

堤:日本の演出家は、ご自分が望んでるイメージを先に打ち出すことが多いですが、外国人の演出家は最初に話し合いから入るんです。どんなバカな質問でもしていい。「このヒト、男?」ってところから聞いてもいい。「なんでこんなこと言うと思う?」「いや、俺はこうだと思ってた」みたいなところから、お互いの共通意識とか、共通言語を持って世界観に入っていくことが多いですね。

──戯曲が書かれたのは1970年代。ソビエトを連想させる架空の独裁国家を舞台に「自由」とはなにかを問う物語ですが、ウィルさんは「今この作品を上演するのに最適な時期だ」とおっしゃっていました。その辺、どう感じました?

堤:確かに世界は閉鎖的な方向に逆行してる感じはありますよね。俺が演じるアレクサンドルは、自由に発言しただけで政治犯として精神科病院に入れられる。現代は、SNSなどで自由に意見を発信できる社会ですが、どこか監視し合ってるというか、規制し合ってるようなところも感じますよね。何かに反対意見をつぶやいたら、すぐに罵声を浴びせる人がたくさん現れそうで。どこか保守的になっているというか、大多数の意見に従っていれば間違いない、というような思考停止が起きている感じがする。そういう意味ではウィルの言う通りだと思いますね。

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