ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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ヒップホップが爆発的に広がったきっかけは、「世の中を良くする」とは真逆の事件なんですけどね。1977年にニューヨークで大停電があり、それまで高くて手が出なかったターンテーブルやミキサーが電器店から強奪された。で、翌週にはあちこちでDJパーティーが開かれたそうです。もう無茶苦茶。が、大事なのはここから。そんなパーティーでケンカが起きると「暴力はやめようぜ」「クールじゃないよ」って働きかけるわけです。警察など体制は何もしてくれないから、自分たちでコミュニティーを良くする。これがヒップホップの出発点なんです。
ラップのバトルは、若者のエネルギーをリリックに込めてぶつけ合う、日本でいうと相撲をとるのに近いスポーツの感覚です。神様と呼ばれるアフリカ・バンバータは元ギャングのボスで、抗争の勝敗をブレイクダンスで決めたという話もある。彼が歌うピース、ユニティ(団結)、ラブ、ファンがヒップホップの4大要素。で、ピース違いだけどグリーンピース。緑の豆があんなにある中で、なぜお前が名乗る?って不思議です。
※AERA 2019年4月15日号