■「恵泉」ブランドを守る最善の策では

 もっとも、恵泉女学園中学高校から恵泉女学園短期大、恵泉女学園大に進む生徒は少なかった。フェリス女学院、神戸女学院などのように付属、系列校が進学校として確立しているケースと同じである。

 恵泉女学園大の募集停止をどう見たらいいか。

 大学の世界から退くという経営判断は正しいといえる。他の女子大では、コンサルタントの指南で需要があるとされる看護学部を設置したが、そこでも定員割れを招き失敗しているケースもある。恵泉がこうした分野に手をださなかったのは賢明だった。いつまでもブランドにしがみついて大学経営を続けることをしない、というのは、「恵泉」ブランドを守るために最善の策であろう。

 それでも、「恵泉」の一つがなくなるのは、さびしい。

 学校法人恵泉女学園は、第1次世界大戦後の1929年、「広く世界に向って心の開かれた女性を育てなければ戦争はなくならない」と考えた女性キリスト者、河井道によって設立された。

 この思いは、いまに伝えられている。

 2015年、安保関連法案をめぐって、当時の学長は安倍政権を次のように厳しく批判していた。

 恵泉女学園大はリベラルで自由な校風として知られていた。

 時の政権にものを言う大学がなくなってしまうのは、いまの世の中だからこそ、残念でならない。

教育ジャーナリスト・小林哲夫

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