先日泊まったホテルで寝ていたときのことだ。夜中なのに、廊下で大騒ぎしている男女の声がした。女の人がギャーギャーいうような叫び声を、男の人が一喝したなと思った瞬間、すぐに“バーン”と部屋のドアに何かを打ち付けたような大きな音がした。そしてすぐに、静寂に戻った。
「ああ、よかったと思って眠りにつこうとしたときに、私のドアがガチャガチャ鳴ったんです。あっ、部屋を開けようとしているな、と。もしかして、部屋を間違えている?と焦っていたら、ホテルなのにドアが開いて人を引きずる音がしてきた。それが視えた瞬間に、男女が消えて、金縛りも解けたからよかったんですけれど」
調べたら、近くのホテルでそのような殺人事件が数年前に起こっていたという。
■悲観していた、子ども時代……能力を信じられないときも
普通の人が体験しないことを何度も経験していることで、こんな能力、いらないと思ったりしたこともあったという。
「子どもの時は、悲観していました。自分の能力を信じられませんでしたしね。視える能力を捨てようとした時が、一番へこんでいたかな。そして、普通の友達に馴染まなきゃって思っていた時に、視えなくなるわけじゃないんですけれど能力が低くなったと感じたことがありました。でも大人になってこういう話をしたりすると、周りが興味を持って聞いていてくれるようになりました。そう感じたときから、少しラクはなりましたが」
伊藤さんの話を聞いていると「本当だろうか?」「とっつきにくいなぁ」という感想を抱く読者もいるかもしれない。でも、伊藤さんは小さいころからその能力を持ったまま、過ごしてきたのだ。
「神社や仏閣を参拝してきた知識とか助言やアドバイス、生活で癒しになるパワースポットのことなどをスピ散歩で描いてきました。漫画を読みながら神社を巡るのもいいですよね。聖地巡礼の気持ちが、漫画で追体験できるように私の目線から視たものを丁寧に描いています」
地方の神社だけでなく、東京にある強運厄除け神の東京銭洗い弁天を祀る「小網神社」にも参拝している。「知っておきたい金運吉日」「金運が上がる宝くじの買い方」など、タメになる情報も多い。
なんと言っても、自腹で購入した宝くじの結果が細かく載っていて、エピソードも面白い。
恋愛成就や仕事運も大切だが、私たちが一番に願い たくなる生活に直結する金運にスポットを当てた漫画に夢中になった。4月から、全国にある宝くじがよく当たるというスポット巡りを始めたい。
(文・長谷川拓美/朝日新聞出版)
【プロフィール】
伊藤三巳華(いとう・みみか):巳年生まれ。2000年講談社でデビューした後、04年からホラー漫画家として執筆開始。現在、『HONKOWA‐ほんとにあった怖い話‐』で『金運スピ散歩』を連載。神社、仏閣、パワースポットを取材して漫画にしていたが、『金運スピ散歩』は、金運に特化した取材を続ける。祈願をしながら、自腹で宝くじを購入する体当たり検証のエッセイだ。