この春、多くの鉄道各社がダイヤを改正する。今年は大きな変化こそないものの、注目しておきたいポイントがあるという。
【鉄道ジャーナリストが選ぶ 2019年「ダイヤ改正」ベスト10はこちら】
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4時間の壁──。飛行機よりも鉄道を選ぶとされる所要時間の「壁」だ。利用者は4時間を切ると、新幹線に流れると言われる。JR北海道は、3月16日の春のダイヤ改正でこの壁を突破する。
一覧表を見てほしい。鉄道ジャーナリストの松本典久さんが選んだ今年の「ダイヤ改正ベスト10」だ。松本さんによれば、今年のダイヤ改正では極端に大きな変化は見られないものの、地道なサービスの改善を実施しているのが特徴だという。
松本さんがトップに挙げたのが「北海道新幹線 青函トンネル160キロ運転開始」だ。青函トンネル内の最高速度を時速140キロからアップし、東京~新函館北斗間で「4時間切り」を実現する。
実は、青函トンネル(全長54キロ)内は日本で唯一、新幹線と貨物列車が対面走行する区間。すれ違い時に貨物が風圧で荷崩れしないよう、最速320キロを出せる東北・北海道新幹線でも140キロに制限している。そのため東京~新函館北斗間は最短でも4時間2分。3時間台に短縮するには青函トンネル内で160キロを出す必要がある。悲願達成のためJR北海道は昨年、試験走行を実施し安全性を確認。かくして、4分短縮し最速3時間58分で運行させることで「4時間の壁」を破ったのだ。
「JR北海道にとって、『4時間切り』のPR効果は大きい。北海道新幹線は2017年度に営業損失98億円を計上し赤字がふくらむ中、新幹線の利用客を増やすことで経営改善につなげたい考えなのだろう」(松本さん)
今年のベストテンからはある特徴が見えてくる。2位の「『のぞみ』70本 東京~新大阪間の所要時間3分短縮」、3位の「特急『あずさ』『かいじ』をE353系に統一。6分短縮」と、ベストスリーは「時間短縮」が柱となっているのだ。一分一秒を短縮することは、鉄道にとってどのような意味があるのか。