「働き方改革」に取り組み、仕事をする時間も場所も柔軟になった。その半面、顔を合わせる機会が減って薄れたのは団結力。なんとか取り戻そうと、朝礼が注目され始めた。
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底冷えのする日、午前9時10分。「Web朝会議」が始まる。
「マスクをつけている人がいる。風邪かな……」。工業用精密機器メーカーのスリーエス(東京都北区)に勤務する宮下麻里さんが、ノート型パソコンの画面に映る同僚に見入った。画面の中には、本社に勤務する約30人の社員、西日本営業所(大阪市)の社員4人がいる。
宮下さんは、神奈川県鎌倉市の自宅で在宅勤務をする。Web朝会議にはインターネット電話のスカイプを使い、参加している。「画面から、みんなの様子がリアルにわかる。今週もがんばらなきゃ、と思う」
2007年に中途採用で入社し、人事総務課を経て、購買課で製造部品の調達を担当してきた。15年に鎌倉市に転居し、週5日、往復4時間弱の通勤を2年半続けた。しかし、負担も大きく17年に「週4日在宅、週1日出社」の条件で初の在宅勤務社員となる。現在は全社員共有のスカイプやチャットツールを使い、経営企画に関わる。
20年以上前から朝礼をしてきたが、09年からインターネットを使うWeb朝会議に衣替えした。毎週初めの日に20分ほどで売り上げの進捗や社内行事などを全員で共有する。社長の吉田秀樹さん(45)は「朝会議はスポーツで言えば円陣を組み、声を掛け合うようなもの。仲間の心がひとつになる」と話す。
朝礼や朝会議のあり方が今、変わりつつある。背景には「働き方改革」で、社員と会社の関係が見直されていることがある。残業時間の削減や有給休暇の消化奨励のほか、テレワークや在宅勤務にも取り組む企業が増えてきた。一方、会社や部署の社員が顔を合わせる機会が減る。
そこでスリーエスのように、日本企業の強みである団結力を取り戻そうと社員同士の心の絆に着目する会社がある。そのひとつの手段が朝礼だ。