「箱根のスターは大成しない」――。そんな世間の声を結果で黙らせたのが、大迫傑(早稲田大、2014年卒)だった。佐久長聖高から鳴物入りで大学駅伝界に身を投じると、1年時から1区で区間賞の走り。4年時には世界陸上(1万メートル)にも出場し、「学生最速ランナー」の枕詞とともにエースとして活躍した。そして卒業後、日清食品を経て、2015年4月からはプロランナーとして活動。2016年のリオデジャネイロ五輪に出場(5000メートル、1万メートル)した後、2017年4月に初マラソンを走り、2018年10月、2020年3月と2度にわたって日本記録を更新(自己ベストは2時間05分29秒)した。人気が低迷していた男子マラソン界の救世主として高いスター性を発揮し、2021年東京五輪では日本人トップの6位入賞を果たした。一度は現役から退いたが、今年のニューイヤー駅伝に出場して3区区間2位の走りを見せている。

「三代目・山の神」を襲名した神野大地(青山学院大、2016年卒)も大きな期待を背負った箱根出身ランナーだ。3年、4年と2年連続で5区を走り、箱根2連覇の原動力となった大学時代の活躍ぶりは実に輝かしかった。だが、卒業後は思うような成績は残せていない。コニカミノルタ入社2年目の2017年12月に初マラソン挑戦するも2時間12分50秒の13位。その後、プロランナーに転向して多くの大会に参戦したが、学生時代のようなインパクトのある走りは披露できていない。それでも2021年12月の防府読売マラソンで自己新の2時間09分34秒のタイムで2位と好走してMGC出場権を獲得。現在29歳、2024年のパリ五輪出場を目指している。

 服部勇馬(東洋大、2016年卒)も箱根で快走を続けたエースだった。1年時から三大駅伝で結果を残し続け、箱根では3年、4年と渡辺康幸(早稲田大)以来20年ぶりの2区2年連続区間賞を達成した。卒業後はトヨタ自動車に入社し、実業団駅伝で活躍すると同時にマラソンでも結果を残し、2018年12月の福岡国際マラソンで2時間07分27秒の好タイムで優勝。翌年9月のMGCでも2位と好走して東京五輪出場権を勝ち取った。だが、2021年8月の五輪本大会では、故障による準備不足も祟って熱中症を起こして73位(2時間30分8秒)でゴール。現在は五輪舞台でのリベンジへ向けて、再起へのプロセスを歩んでいる最中だ。

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記憶に新しい「箱根のスター」の現在地