観光地として人気が高い一方で、長いモノづくりの歴史も併せ持つ京都。そんな京都に今、企業がこぞって拠点を構える動きがある。その背景には何があるのか。
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連綿とモノづくりの歴史を紡いできた京都。ここをさらに「世界のモノづくりベンチャーの都」にしようと奮闘する人に会った。ダルマテックラボ社長の牧野成将さんだ。牧野さんが運営するKyoto Makers Garage(KMG)は、野菜や水産物を運ぶトラックが行き交う京都中央卸売市場のはずれにある。聞けば元は乾物店の倉庫だとか。
「アップルもニューヨークのソーホーも、イノベーションは常に倉庫からです」
と牧野さんが笑う。入って目につくのは3Dプリンターやレーザーカッターが並ぶ工房。KMGはモノづくりベンチャーが「量産試作」に向けて職人と打ち合わせをしたり、投資家にプレゼンをしたりする場だ。量産試作とは、実際の製品と同じ工程で試作をし、問題がないかをチェックするプロセス。アイデアがあっても量産化ができなければビジネスは成り立たない。
牧野さんは前職のベンチャーキャピタル時代に、投資先を探しに行ったシリコンバレーで、多くのモノづくりベンチャーが、量産試作の段階でつまずいていることを知った。どうすれば「量産化の壁」を突破できるのか。ヒントは足元にあった。京都の町工場が持つ「試作力」だ。
町工場は東京の大田区や東大阪にも集積しているが、一軒一軒が独立している。一方、伝統工芸の歴史がある京都には、各職人が作り上げたパーツをすり合わせながら組み上げていくネットワークがある。01年に発足した「京都試作ネット」は試作に特化した専門家集団だ。
「ここと世界中のベンチャーを結びつければ京都は世界のモノづくりのハブになれる」(牧野さん)
牧野さんとプロジェクトに取り組むメンバーは現在27人。3分の1が外国人だ。最初のメンバーはたまたま京都観光に来ていた日系ブラジル人。そこから人づてにどんどん集まったというから、さすが京都だ。