「鉄道会社の姿勢として、撮り鉄を排除しようというのではなく、マナーを守り安全に撮影する人は歓迎してくれる」

 鉄道会社にとってファンの多くは「お客さま」であり、経営を支える心強いサポーターでもある。

「われわれ鉄道会社も受け入れることで遠方からも来ていただき、ひいては地域全体を盛り上げていきたい」

 と話すのは、岩手県を走る人気ローカル線IGRいわて銀河鉄道の営業部販売促進グループ主任の池端直哉さんだ。

 同鉄道は17年10月、滝沢駅(岩手県滝沢市)の2・3番線ホーム端に、撮影専用ブース「Train Spotter’s(トレイン スポッターズ)」と呼ばれる「お立ち台」を設置した。撮り鉄のマナー向上を呼びかけるためにつくったといい、広さ約10平方メートルで三方をフェンスで囲んでいる。

「鉄道会社公認のスポットということで、撮り鉄の方も安心して写真が撮れ、一般の利用客の方にも迷惑にならないので好評です」(池端さん)

 スイッチバックで有名な、えちごトキめき鉄道の二本木駅(新潟県上越市)でも同じ17年10月に、撮影や見学ができるスペースを設置した。

 先の遠藤さんはこう話す。

「盗り鉄のように物を盗むのは鉄道ファンではない。写真でも競い合うのではなく、マナーを守り撮影するのが本当の鉄道ファン。その場所に行って現物を見て、そこにあるものを共有して幸せになる。『ここにあるんだ、すごいね』と満足するのが、心豊かな鉄ちゃんです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2019年2月4日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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