参加者のひとり、グラフィックデザイナーのEIICHI(エイイチ)さん(46)はキッチハイク内ではよく知られた存在だ。これまで約250回、食事会を開催したり参加したり。そこまでハマるのはなぜ?

「もともと食べることが好きなのですが、友だちと食べに行こうと思ってもスケジュールが合わなかったり、せっかくの食事が愚痴を聞く場になってしまったりすることも。その点、キッチハイクは自分の都合で参加できるし、いろいろな人に出会え、その思いに触れられるので興味が尽きない」

 この日のクック・ツトムさんは建設関係の仕事をしており、妻とふたり暮らし。2016年、初めてキッチハイクに参加した。

「小学生の頃、友だちの家に泊まったり、ご飯を食べに行ったりしたときの“あの感覚”を大人になってキッチハイクで再び味わっている感じです」

 当初は食べる専門だったが、次第に作る側もやりたくなり、昨年デビュー。“人気クック”のひとりに数えられるが、「僕は素人さが売り」とツトムさんは頭をかく。

 ツトムさんのようなケースがキッチハイクで少なくないのは、「料理の腕」が第一に求められていないからだ。料理経験があまりなくても、参加者が手伝ってくれる。オリジナルの料理だけでなく、キッチハイクが提携している食材宅配会社・ヨシケイのメニューと食材のセットを使うこともできる。ツトムさんは今回、これを利用。買い物やレシピを考える手間が省けるため手軽に開催できるという。キッチハイク共同代表の山本雅也さん(33)はこう語る。

「『おいしいもの』を食べる、ではなく、『おいしく食べる』ほうにキッチハイクは主眼を置いています。三つ星レストランの料理を毎日ひとりで食べるより、なんてことのない料理を仲間とワイワイ食べるほうがおいしかったりしませんか?」

 ホストがゲストに食事をふるまう“サービス”でなく、食事の楽しさをシェアする“コミュニティー”。その場をもっと増やし「みん食」を広げていきたいと言う。(編集部・石田かおる)

AERA 2019年1月28日号より抜粋