「希望する大学を見つけるためには、他校のオープンキャンパスも紹介します。なぜ追手門じゃなきゃ駄目なのか。そこをクリアにして入学すれば、4年間の学びの姿勢も変わり、他の学生も巻き込む大学生活のリーダー的な役割も期待できます」
島根大学では16年度入試から「地域貢献人材育成入試」を実施している。将来の地域活性化のリーダーを担う、島根、鳥取両県の地域志向の強い学生を受け入れるのが狙いだ。島根大学アドミッションセンターの美濃地裕子准教授は言う。
「地域への思いを評価する入試制度と入学後の教育により、地域社会から躍進する人材を育てていきたい。学生は地元企業でのインターンシップや、地域と連携した学部横断型のプロジェクト学習に取り組みます」
大学だけではない。中学受験専門誌「進学レーダー」編集長の井上修さんはこう話す。
「大学入試改革の動きに同調するように、中学受験でも思考力を問う入試が増えてきています。中学受験をする親の世代の大半は共働きで、働くことを通し、知識偏重型の教育が社会で通用しないと肌で感じています」
井上さんが例として挙げるのが、共立女子中学・高校だ。同校では通常の4科型入試に加え、算数と英語のゲームなどを介して表現力を評価する「インタラクティブ入試」と「合科型入試」がある。合科は図や表などを読み込み、理科や社会に関する質問に答えるテストだ。
前出の小林さんは「入試改革」で大学選びが変わると言う。
「入試改革と同時に、大学はどんな人材を求め、どんな教育をして、どんな人材を送り出そうとするのかを示さなければならない。偏差値順の選抜ではなく、これからは大学と学生とのマッチングが重要になります」
この動きは大学の勢力図も変えるかもしれない。
予備校大手河合塾による今春の大学入試動向分析によれば、私立難関大への志望者が前年と比べ大きく減っている。早稲田大、慶應大、上智大の「早慶上」が前年比88%、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大の「MARCH」が88%。関西では関西大、関西学院大、同志社大、立命館大の「関関同立」が91%になった。
河合塾教育情報部部長の富沢弘和さんはこう分析する。
「定員の厳格化などにより私大の試験が難化し、受験生が安全志向に走った結果、難関校の志望者が減った」
入試改革が進めば、「名門だから」「偏差値が高いから」などと、漠然と有名大学を受ける志願者が減り、自分に合った大学選びに変わっていくと見通す。
「根本的に入試やカリキュラムを見直す大学が出てきている。魅力的な大学生活をアピールできれば、受験生を獲得できるでしょう」(富沢さん)
大学にとってはこれまでの偏差値序列の大学勢力図を変えるチャンスとも言えるだろう。(編集部・澤田晃宏)
※AERA 2019年1月28日号より抜粋