2020年度に向け、“脱偏差値”を掲げて大学入試改革に挑む早稲田大学。センター試験に代わって実施される大学入学共通テストの導入を決めたり、政治経済学部で数学を必須化したりと、すでに様々な改革を発表している。その狙いを田中愛治・早稲田大学総長に話を聞いた。
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なぜこのような大きな改革をするかというと、今までの入試には限界が見えてきているからです。これまでの一般入試は正解のある問題を速く解く能力を見ていますが、これからは正解のない問題に挑戦し、自分なりの答えを出していくようなたくましい知性が必要です。また、世界にはいろいろな価値観があることを理解するしなやかな感性を持つ学生を育てたいのです。
入試は大学の生命線ですから、その学部が育てたいと思っている人材で、最も才能が開花しそうな学生を選考することに関してエネルギーと時間を惜しまない覚悟が必要です。
しかしそれで教員の研究がおろそかになってはいけないので、会議数を減らすなどの改革を行っています。最先端の研究を教育に反映させる教員のところには良い学生が来ます。そういう学生は要求水準も高いので、教員もそれに応えるべく努力する。教員が研究の成果を教育に生かし、その教育を受けた学生が社会に貢献する。そういうふうになってほしいと思っています。
ある系属校の高校生に、企業経営を勉強したいが政治経済学部と商学部のどちらがいいかと聞かれ、商学部を勧めたところ、担任も両親も偏差値の高い政治経済学部を勧めると言われました。後から高校の先生に聞いたところ、その生徒は成績がトップでした。大学の教育内容とは関係がない、受験産業の基準である偏差値で学部を選ぶのは本人のためによくありません。それより本人のやりたいことをやれる環境に学生を導きたいです。