「早稲田はこれまでも入試改革をしていますが、小論文は導入したものの10年もたたずにやめるなど、場当たり的に見える」

 早稲田大学商学部を卒業後、都内の区立小中一貫校教諭になった西村柳一郎さん(41)は、早稲田が掲げる“脱偏差値”も簡単には進まないだろうとみる。

「偏差値というより就職先を考えて学部を選ぶのが現実で、会社の学閥・学部閥が残っている間は難しいのでは。本当にその改革を進めるのに必要なのは、大学と小中高といった下の段階との連携と、大学と企業の関係が変わることではないでしょうか」

 それでも早稲田は、なぜ入試改革を進めるのか。

 若年人口減による学生数の減少と、私学助成金の減額による財務基盤の悪化は、各私大の経営を直撃する深刻な問題になっている。そんな中、大学のあり方を根本的に変えなければ、“私学の雄”といえども、生き残りは容易ではないと考えているのだ。

 生き残りのため、アジア発のグローバルユニバーシティーになる。創立150周年を迎える32年までの中長期計画「Waseda Vision 150」からは、早稲田のそういう野心と覚悟が見える。一連の入試改革も、この計画に基づいているという。須賀副総長は言う。

「どういう人間を育てたいのか、そのためにどういうカリキュラムが必要かというカリキュラム改革が先にあり、そのために必要な入試は、と考えていったらこのようになりました。受験生は、偏差値に踊らされず、教育内容を見て進路を決めてほしい」

(編集部・小柳暁子)

AERA 2019年1月28日号より抜粋