早稲田は慶應に遅れること9年、99年に法学部がセンター試験に参加し、その後積極的に各学部で利用を始めた。一方の慶應は06年に医学部がやめ、現状一切センター利用をしていない。早慶は全く逆の対応となっており、その傾向が共通テストでも続くことになる。
早稲田が地方から学生を採りたいと考える背景には、地方活性化に貢献する学生を育てたいという創立以来の理念と、多様な学生が集まることが何よりも重要であるという考えがある。
伝統的に、雑多な学生たちがサークルやボランティア活動でも切磋琢磨する環境の豊かさが早稲田の強みだった。早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターでは、難民や無国籍者の支援、ラオスの小学生への教育支援、ブータンの地域活性化といった、さまざまな学生のボランティア活動をサポートしている。32年度までに外国人学生を全学生の20%、女子学生を50%にするという数値目標を掲げ、すべての都道府県からの受け入れを目標とし、「地域への貢献」をテーマとした活動も行う「新思考入試(地域連携型)」を行っている。このように多様性のある環境づくりをしているのだ。
早稲田の改革のもう一つの特徴として、入試改革の“その先”も見すえていることがある。
「受験生が過去にどういう経験をして、どんな問題意識を持ち、今後何をしたいのかが情報として伝われば、将来、学部独自試験もいらなくなるかもしれない。たとえばeポートフォリオの利用などです。正しく評価できれば、最終的にはそれが理想です」(須賀副総長)
eポートフォリオとは、生徒自らが学習内容や活動の情報を入力して作るデータベースで、ここ数年高校や大学で導入が進んできた。現行の日本の入試は、たった数時間の試験結果で合否を判断する形だが、これなら高校生活全体での取り組みを総合的に判断することができる。アメリカの大学などでも導入されているが、日本ではまだ定着しているとはいえない状態だ。
早稲田が進める改革について懐疑的な見方もある。大学入試の国語専門塾である鶏鳴学園の中井浩一さんは、こう話す。