実際に今回拘束されたアステラス製薬の男性は、現地法人の幹部だった。また、中国でビジネス展開する日系企業の支援を行う「中国日本商会」の幹部を務めた経験もあるという。

 そのほか、これまでに拘束されたのは、19年9月に北京市内で北海道大学の教授、18年2月に伊藤忠商事の男性社員だった。

 拘束されるのは日本だけではない。

 18年2月、カナダは米国からの要請で華為(ファーウェイ)の最高財務責任者で創業者の娘の孟晩舟氏を国内で逮捕した。これに対抗するかのように中国当局は同年12月、元外交官と企業家のカナダ人男性2人を、スパイ容疑で拘束した。当局は当時、身柄拘束の理由を明らかにしなかった。

 この事件ではカナダから身柄の引き渡しを受けたアメリカが孟晩舟氏を解放した直後に、中国はカナダ人男性2人の身柄を解放している。

■事案が起きたら企業はすぐに公表すべき その理由とは

 実際に中国に駐在員がいる日系企業は、社員が拘束された際にどんな対応が求められるのだろうか。

「まず拘束された後、数カ月は監視下に置かれます。16年に拘束された日本人男性は約7カ月間、古いホテルのような一室で一日中監視され、取り調べを受ける生活を強いられました。この段階のときに国が積極的に動いて、身柄の解放を実現しないといけません」

 松丸氏によれば、数カ月に続く取り調べの後、裁判が行われるという。裁判では有罪判決が下されるのはほぼ確定的で、現地の刑務所に収監されることになる。この男性社員は懲役6年の実刑判決を受け、22年10月まで帰国することはできなかった。

「伊藤忠の場合、男性社員が拘束されているということを約1年間公表していませんでした。企業イメージの悪化につながるので避けたい、と考えるのは仕方のないことですが、中国相手に水面下の交渉は有効ではありません。企業はすぐに公表して、マスコミを使って世論を形成し、政府が動かざるを得ない状況を作り出すことが得策と考えます」

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