「唾液」は私たちの健康にとって欠かせないもの。少なすぎても多すぎても不調を招き、会話や食事といった日常生活にも影響してしまいます。特に唾液の分泌不足(ドライマウス)は加齢とともに起こりやすい身近なトラブルなので、気になる症状があれば積極的に対処しましょう。この記事では、日本の漢方のルーツである中国の伝統医学「中医学」をもとに、【ドライマウス】と【唾液過多】の養生法を専門家が分かりやすく説明します。
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■「津液(しんえき)」の不足・過剰が唾液のトラブルに
「唾液」にはさまざまな働きがあり、主に「口内を潤し、発声をスムーズにする」「飲み込みやすくする」「細菌の増殖を抑える」「歯や歯間の汚れを洗い流す」「消化を助ける」「歯の表面を修復する」「酸性を中性に戻す」といった作用があります。
唾液の平均的な分泌量は1日あたり約1~1.5リットルとされ、少なすぎる場合は「ドライマウス(口腔乾燥症)」に。その原因は、加齢による口や顎の筋力の低下、ストレスによる自律神経の乱れ、生活習慣(早食い、喫煙、口呼吸)などで、薬の副作用、糖尿病などの疾患が原因となることも少なくありません。
一方、唾液が多すぎる場合は「唾液過多症」で、加齢による嚥下(えんげ)障害(唾液をうまく飲み込めない)、胃の張り、妊娠時のつわりなどが主な原因となります。
中医学では、唾液は身体に潤いを与える「津液(※体内の正常な水液)」の一つと捉えます。ドライマウスは、この津液が不足して口内が乾燥した状態。また、唾液過多は津液が過剰になって「痰湿(たんしつ:余分な水分や汚れ)」が溜まった状態で、いずれも津液の生成や代謝と関わる「脾胃(ひい)」「肺」「腎」の不調に要因があると考えます。
このように唾液のトラブルは体内の不調にも要因があるため、「乾燥するから水分を多く摂る」といった対処では改善は難しいもの。不調の原因をきちんと知り、体質を整えることで根本から改善することが大切です。
■症状別・唾液のトラブル対処法
唾液の減少は歯周病や虫歯の原因となるほか、口臭、話しにくい、飲み込みにくいといった日常的な不快感にもつながります。また、唾液が多すぎると誤嚥性肺炎などを招く心配もあるので、症状があれば放置せずしっかり対処しましょう。