「政治や組織、さまざまな場所に女性が増えるだけで変革が始まります。女性は男社会のアウトサイダーだから(笑)。女性が生きやすい社会は男性にとっても良い社会のはずなんです」

 望月さんはじめ、本書に登場する女性たちは、みな「自分の声」を持ち、当事者として社会に向き合っている。

「日本は同調圧力が強いし、誰だってバッシングは怖い。それでも『これだけは言わなくては』という気持ちがあるなら、気にせず進まないと。出すぎた杭は打たれない──と、よく私は言うのですが、社会を変えていくためには、声をあげ続けるしかないと思います」

(ライター・矢内裕子)

■書店員さんオススメの一冊

『マンゴーと手榴弾 生活史の理論』(岸政彦著)は、ポスト構築主義の新しい生活史方法論を説いた一冊だ。リブロの野上由人さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 今年、創立70周年を迎えた人文科学・社会科学分野を中心とした専門書出版社が<広く一般読者に届く言葉をもつ著者とともに、「著者の本気は読者に伝わる」をモットーにおくる新シリーズ>として「けいそうブックス」を創刊した。

 本書はその第3弾。『断片的なものの社会学』で「紀伊國屋じんぶん大賞2016」を受賞するなど、まさに「広く一般読者に届く言葉をもつ著者」として人気の高い社会学者が、自身の研究手法「生活史調査」について事例をもとに説明しながら、質的社会学とよばれる研究の目指すところを明らかにしようとする。

 平易な言葉で書かれているが、決してものごとを単純化しているのではない。無理に単純化せず丁寧に書き分けているから読めるのだ。当シリーズにふさわしい「届く言葉」「著者の本気」を実感した。

AERA 2018年12月17日号