■sweet revenge Tour 1994
1987年の映画「ラストエンペラー」の音楽でアカデミー賞作曲賞を受賞。1992年にバルセロナ・オリンピック開会式の音楽を担当し、自らオーケストラを指揮するなど、世界的な音楽家としての名声を得た坂本は、1994年にアルバム『スウィート・リべンジ』を発表。ボサノバの要素を取り入れた本作を中心にしたツアーには、シンガー・ソングライターの高野寛やイギリス人バイオリニストのエヴァートン・ネルソンなど国内外のミュージシャンが参加した。
ポップな歌モノを中心としたコンサートは終始リラックスした雰囲気で進んだ。筆者が足を運んだ会場では、演奏中に小さい子どもが泣き出すアクシデントがあったのだが、坂本は「気にしないでくださいね。子どもの泣き声も音楽の一部だから」と優しくフォロー。坂本に対する“厳密で気難しい人”という筆者の勝手なイメージは百八十度変わった。
■アルバム『BTTB』発売時のインストアイベント/1998年
1998年に発表された『BTTB』は、坂本が影響を受けたドビュッシー、モーリス・ラヴェル、エリック・サティなどを想起させるピアノのインスト曲を収めた作品。本作のリリースに際し、都内の複数のCDショップでインストアイベントが行われた。筆者は新宿のCDショップに参加。黒のセットアップとNew Balanceのスニーカーという格好で登場した坂本は、「どうもありがとうございます」と笑顔でピアノの前に座り、アルバムの収録曲を演奏した。筆者はピアノの真後ろにいたのだが、目の前に教授がいることの興奮で、何の曲を演奏したかも覚えていない。
翌1999年リリースのインスト曲「energy flow」(「ウラBTTB」収録)は、栄養剤のCMに起用され、大ヒットを記録。当時の筆者の感想は「もっといい曲たくさんあるよ」だった。
■「MORELENBAUM2/SAKAMOTO」コンサート/2001年
ボサノバの生みの親として知られるアントニオ・カルロス・ジョビンが率いたバンド“バンダ・ノヴァ”のメンバーであるジャック・モレレンバウムと、その妻ポーラ、そして坂本龍一による「MORELENBAUM2/SAKAMOTO」。2001年8月に東京と大阪で行われたこのユニットコンサートの照明は、風力発電によってまかなわれていた(会場の赤坂ACTシアターの前には風力発電の装置が装備された車が置かれていた)。
ライブでは「MORELENBAUM2/SAKAMOTO」名義の楽曲のほか、地雷除去のキャンペーンのために制作された「ZERO LANDMINE」も演奏された。坂本龍一の呼びかけで結成されたユニット「N.M.L.」(NO MORE LANDMINE)名義で発表されたこの曲には、シンディー・ローパー、ブライアン・イーノ、桜井和寿(Mr.Children)などが参加。この後も坂本は、環境問題、社会問題に積極的に関わるようになる。