急な休園が起こる最大の原因は、企業主導型の設置について市区町村が関与しないことだ。本来、児童福祉法によって市区町村に保育義務があり、需給計画を立てながら保育所を整備しているが、ニーズを無視して企業主導型が乱立した。結果、共同通信が7~8月に行った調査では定員に占める利用者数の割合は、わずか49%だった。
一方、待機児童の多い地域への設置を申請しても落選するという矛盾も起こっている。18年度は2288施設、5万1499人分の申請があり、審査を経て10月末に約1500施設、約3万5千人分が助成決定の「内示」を受けた。残りの「不採択」業者にはメール一本の通知で終わり。審査項目は、(1)待機児童対策への貢献、(2)多様な働き方に応じた保育の提供、(3)事業に要する費用、(4)事業の持続可能性、(5)保育の質、(6)保育事業の実績とされているが、不採択の理由は示されない。
岡山県のある事業者は、不採択通知を受け「どこが悪かったのか全く分からない」と、納得がいかない。開設予定地は待機児童が多く、金融会社が支店を出す計画もあって、新たな保育ニーズが生まれると自治体の保育課と事前に話し合っていた。商店街が近く、サービス業で働く親のため日曜祝日も開所。延長保育も柔軟に受け付け、夜10時まで預かる計画だった。
問題がある業者に安易に許可が下りる一方、ニーズに合わせた設置が理由もわからず却下されるという現実。拙速に待機児童を解消しようとするあまり、不備ある制度で利用者たちが振り回されている。(ジャーナリスト・小林美希)
【訂正】
記事中に「助成が決定されると最初に約1億円の施設整備費が支給される」とあったのは、「助成が決定されると工事費用の4分の3相当分が交付される」の誤りでした。お詫びして訂正します。
※AERA 2018年12月17日号