旧態依然の制度で、時に親たちに不自由を強いるPTA。一方で、そんなPTAを変えようと動き出している親たちもいる。改革に奔走する人々を取材した。
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親にとって「学校が不自由だ」と感じる最大の理由、それはPTAだろう。従来の行事を改善もせず毎年行っていたり、会合の運営の仕方が非効率だったり、役員決めが強制的だったり……。特に共働き家庭が増えている今、その不自由さが親たちを苦しめている。
だが、そんな岩盤組織を変え始めた人たちがいる。
「3年かかったけれど、変えてみたら意外と支障はなかった」
と言うのは名古屋市立吹上小学校の元PTA会長、下方丈司さん(49)だ。このPTAには以前、「投票で学級委員に選ばれた人が断る場合は自分で代わりを探す」という不毛なルールがあった。3年前に「おかしい」と指摘する親が複数現れ、役員にも「今のやり方には無理がある」という認識が共有された。
そこで見直しを前提に、アンケートや意見交換会を重ねた。役員がトップダウンで進めるのではなく、保護者の意見を広く吸い上げることがカギだった。臨時総会で「学級委員を廃止して活動ごとに参加者を募集する」ことが決まった。
「自由参加では誰もやらなくなるのでは」と心配されていたが、やってみたら全く違った。運動会の手伝いや講演会企画、広報など19の活動項目すべてに、十分な人数が集まった。年間を通して委員はできなくても、行事ごとには参加できる人がいたし、なにより強制されるのではなく自分で好きな活動を選んで参加できることが好評だった。
唯一強制が残る「地区委員」も来年度からなくせないか検討中だ。この委員をなくせば、登校を見守る旗振りの当番表が作れなくなり、旗を次の人に回せなくなる。だが、各家庭に1本旗を配れば解決する。かかる費用は総額6万円程度。委員をなくすことがそのコストに見合うかどうか、検討が進む。おかしいと思っても何も考えず、前例踏襲を続けてきたこれまでと比べたら、大きな進歩だという。