クイーンの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」が快進撃中だ。2週目で公開週末対比110%を記録。ロックファンを熱く揺り動かしている。
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エーオ! エーオ!とフレディが歌いかけてくる。一緒に歌いたい、手を叩きたい。すでに「ボヘミアン・ラプソディ」を観た人の中には、じりじりした思いを抱いた人も多いだろう。
11月9日の公開当初は438だった上映館は第2週には508スクリーンに拡大。一緒に歌ったり、手が叩けたりする“胸アツ応援上映”は公開時の2館から100館以上に一気に増えた。
「予想以上の反響。それもチケット代が高いIMAXやドルビーアトモスの音響のいいスクリーンから席が埋まっている」(20世紀フォックス映画マーケティング本部長・星野有香さん)
ヒットの要因は俳優らの熱演と楽曲のよさだ。オリジナル音源が使われているので、ライブさながらの体験ができる。
とはいえ、2時間強の映画に収めるため、現実と違う部分もある。カリスマの権化のようなフレディ・マーキュリーを演じるラミ・マレックの熱演も、実物との違いが気にならないといえばうそになる。にもかかわらず、映画の中盤からエンドロールが終わるまで滂沱の涙が流れてしまうのだ。
観客の中心はやはり全盛期を知っている50~60代。
「中高生時代は『ミュージック・ライフ』を夢中で読んでました」と話すのは、友人と2回目を観に来た大村由紀さん(58)。フレディが髪を切った頃から大村さんの関心はディープ・パープルやレッド・ツェッペリンに移った。1985年のライブ・エイドは「片目で見ているような状態」だった。しかし、洋楽の世界を教えてくれたのはクイーンだ。今回の映画のおかげでロジャー・テイラーに熱を上げ、友人たちと必死でクイーンの情報を集めていた思春期の気持ちが蘇(よみがえ)ったという。
「私の中のフレディが成仏した」と言うのは、50代の森田由美さんだ。91年、エイズであることを公表した翌日にフレディが亡くなったショックを長年、引きずってきた。