――羽生は1月になってから本格的に練習を再開。しかし簡単に技術は戻らなかった。
オーサー:難しい時間でした。ハビエルは五輪への最終調整で、4回転をバンバン跳ぶ。結弦はまだ3回転で苦労している。6年間、刺激しあってきたライバル同士ですが、いつもの明るいじゃれあいも無く、気まずい空気が流れました。でも真の友情はちゃんと培われていたのです。
――その友情をオーサーは、五輪会場でも目撃することになる。
オーサー:男子の試合前日の公式練習で、2人は素晴らしい演技をしました。リンクサイドに一緒に来てニコニコ笑いながら話し、いつもの温かい空気が流れました。すると2人はチーム・ブライアンの名物である基礎練習をシンクロしながら披露したのです。美しい光景でした。私は絆の強さを感じ、最高の五輪になることを確信しました。
――チームの絆が精神的な強さにつながったというオーサー。
オーサー:本番は、2人とも本当に魔法にかかったような時間でした。結弦は、涙なしに見られない決死の演技でした。ハビエルはいつになく平常心で、スペインの全国民の期待を背負いながら銅メダルをつかみました。2人を心から誇りに思います。
――五輪後、フェルナンデスは今季前半を休養。羽生は現役続行となった。
オーサー:北京五輪に向けて、チーム・ブライアンは休んでいられません。4月には再始動しました。エフゲニア・メドベージェワ(19)ら新しいメンバーが加わり、結弦にとっては新たな刺激が出来ました。それぞれ持ち味が違いますし、尊敬しあえるチームメートになっていくと思います。
――五輪連覇を果たして迎えた今季、グランプリシリーズ初戦のフィンランド大会では、世界最高点297.12 点で優勝した。
オーサー:結弦は五輪連覇を果たしても、まだ勝利と成長への強い意欲があります。コーチの私が感心させられるほどです。具体的なモチベーションの一つが4回転アクセルですが、そのための前段階として、トリプルアクセルを二つ目につける連続ジャンプをやっています。最高の難度と質のトリプルアクセルを練習することが、4回転アクセルにつながるからです。
――続くロシア杯では、ショートで世界最高点を更新した。
オーサー:ロシア大会に向けて、トロントでの練習は絶好調でした。それは3年前に初めて300点を超えた時のようでした。驚くほどの速さで調子を上げ、プログラムを完璧にこなしていました。ロシア杯でのショートは、結弦の普段の練習そのもの、いや、試合での情熱も加わって本当に素晴らしい演技でした。