フィギュアスケート男子の平昌五輪銀メダリスト、宇野昌磨がスケートカナダで優勝した。ショートプログラムでは2位だったが、フリーで逆転。強い思いでそれを成し遂げた。
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「グランプリ(GP)ファイナルに行きたいという気持ちはあります。自分の演技をすれば、きっといい結果はついてくる。今は試合に向けて自分らしい演技ができるように、とやっていくだけかなと思います」
フィギュアスケート男子の平昌五輪銀メダリスト宇野昌磨(20)は、カナダのケベック州ラバルであった今季の自身GPシリーズ初戦、スケートカナダを翌日に控えた10月25日、大会への意気込みを語った。
「調子は全くもって良くもなく、悪くもなく、普通かなと思います」
淡々と語る、いつもの宇野がそこにいた。
男子ショートプログラム(SP)。宇野は直前の6分間練習でトリプルアクセル(3回転半)以外の4回転ジャンプでミスが目立った。
「だからこそ、やってきたことを信じて、強い気持ちで4回転フリップ、4回転─3回転の連続ジャンプを跳んだ」
冒頭の4回転フリップは出来栄え点(GOE)で3・93点の加点を引き出した。続く連続ジャンプは4回転は決めたが、3回転で少し着氷が乱れた。それは、攻めた結果。宇野は「良い傾向のミスだと思った」と心の中には充実感があった。
ここから、だ。演技後半のトリプルアクセル。練習ではあまり失敗しなかったジャンプで転倒した。
「練習で跳べていたからという油断した気持ちが踏み込みに出てしまって、かなり浅い踏み込みになってしまった。自分の油断した気持ちで失敗を招いた。すごく悔しいです」
演技後の報道陣とのやりとりでは、何度も何度も「悔しい」を繰り返した。自分らしい演技をすれば結果はついてくるはずだった。なのに、自分らしい演技ができなかった。自分自身を許せず、闘争本能が目覚めた。
翌日のフリー。誰かをにらみつけるような鋭い眼差しでポーズをとった。ベートーベン作曲のピアノ曲「月光」が流れると、すーっと滑り出す。指先から足まで全身で丁寧に音を拾いながら、しなやかに舞った。
ジャンプ構成は冒頭から4回転ジャンプが続く。サルコー、フリップ、トーループ。全てを着氷させた。樋口美穂子コーチも拍手を送った。スピン、ステップ、4回転からの連続ジャンプと、続くエレメンツを力強くこなした。後半の連続ジャンプは「体力が残っていなかった」と転倒する場面もあったが、最後まで集中して滑りきった。演技が終わると腰に手をあて、肩で息をした。