佐藤健主演の映画「億男」が10月19日から公開される。佐藤が演じる一男は、兄の借金を背負い、ダブルワークをしながら借金を返済する、妻子と別居中の男性。そんな一男が宝くじで3億円を当てるが、大学時代の親友・九十九(高橋一生)に持ち逃げされる……。佐藤は本作にどのような思いを持って挑んでいるのか、話を聞いた。
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「僕は一男という人物をすぐにつかめなかったので、役を固めるまですごく悩みました。なぜ九十九は一男と親友になったのか。一男の奥さんは一男のどこに惹かれて結婚したのかなど、キャラクターが見えづらかったんです。どういう方向でキャラクターを作っていくか大友啓史監督とは随分話し合いました」
ポイントとなったのは、原作者である川村元気が込めた「読者が自分を一男に投影してほしい」という思いだった。
「映画でもそのような主人公を目指したいと。つまり、『一男は“世間”である』ということです。世間とか普通の人といってもいろいろな人がいますが、この映画はお金がテーマ。お金は人間の欲と結びついている。人が欲にまみれているところって、汚く見えたり醜く見えたりしながらも笑えたりもするので、そういう方向に振れたらいいなと。そこで、人の滑稽な部分を前面に出し、僕が今まで演じてきた役の中では一番ダサく、かつ笑えるキャラクターになったらいいなと思って作っていきました」
普段から努力家と評判の佐藤。例えば、ドラマ「天皇の料理番」(2015年)。撮影前はまったく料理ができなかった彼が、撮影時にはうまくなりすぎて「下手な人の切り方を指導した」とは、筆者が実際に料理指導者から聞いた話だ。
「主役の料理人役がきて、料理の練習をするのはとても自然なことだし当たり前のこと。特別なことをしたつもりはありません。料理ばかりをしている人の役ですから、僕がいくら練習しても練習しすぎるということはないでしょうし、どれだけやっても足りない。どんな役でもそうですが、僕は少なくともこういう撮り方をしてくれたらその人物に見えそうだなと思うまでは練習します。(剣術アクションの)映画『るろうに剣心』にしても同じです。映画が世に出た時に、観た人から剣心ぽく見えるな、かっこいいなと思ってもらえるという勝算が見えるまでは絶対に練習します」
「半分、青い。」の萩尾律と「義母と娘のブルース」の麦田章は同時期に撮影が重なった。全然違うタイプを演じる時はどのように切り替えるのだろうか。