『デザイナー』『有閑倶楽部』『プライド』──数々の話題作で、少女漫画に旋風を起こし、つねにトップを走ってきた漫画家・一条ゆかりさん。半世紀の軌跡と現在の心境を聞いた。
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「少女漫画のクイーン」と呼ばれる一条ゆかりさんの原画展「一条ゆかり展 ドラマチック!ゴージャス!ハードボイルド!」が東京・弥生美術館で開催中だ。意外なことに、一条さんの画業をたどる原画展は今回が初めて。デビュー50周年を記念して、華麗にして緻密な原画が会期中の展示替え作品を含め約280点公開されることになった。
自分を捨てた母親に復讐を誓う女性が主人公の『デザイナー』。年上の女性と少年との年齢差を超えた愛を描いた『砂の城』。これらの作品が少女を読者とした「りぼん」(集英社)に連載されていたとは驚きだ。
かと思えば、『有閑倶楽部』はセレブ高校生6人が、さまざまな事件に巻き込まれる痛快アクションコメディー。一条さんならではの洒落たセンス、スケールの大きなエンターテインメントは、まさにゴージャスというほかない。
ジャンルを超えた作品を手がけ、つねに少女漫画の最前線に立ち続けてきたプロフェッショナルは、今、何を考えているのか。
「老後を考えて建てた」という、都内の住宅地の瀟洒(しょうしゃ)な一軒家で、これまでの作家生活と人生哲学について尋ねた。
「家を建てるのは、これで4軒目。ようやく家を建てるコツがわかってきた気がします。老後に大事なのは友達と病院と駅の近くに住むこと。これまで暮らしていた家は処分して、新しい生活を始めました」
中学3年生のときからペンで漫画を描き始めた一条さん。高校2年生で貸本漫画に作品が採用されたあと、「少女フレンド」「りぼん」の新人漫画賞に応募し、高校卒業後に上京。「りぼん」の専属作家としてのデビューだった。
以来、綺羅星(きらぼし)のごとく作品群を生み出し続けてきた。
「私は6人きょうだいの末っ子で、貧乏な家庭で育ちました。子どもの頃、友達が人形で遊んでいても、私は買ってもらえない。だから自分で作るし、現実が好きじゃないので、妄想力が鍛えられました」