妻がキッチンで料理をしている。テレビではヒリヒリとしたコンテスト番組。専門家の私はそのヒリヒリの内実が分かる。それにしても妻は何を炒めているのか、おそらくニンニクとショウガだ。「回鍋肉(ホイコーロー)」って漢字でどう書いたっけ? スマホで調べてみよう。謎の回鍋肉風炒めが食卓に届いた。テレビではそれはそれはハイレベルなネタが行われている。名前がよくわからないコンビだ、調べてみよう。スマホを開く。と、新潮45が休刊という文字が目に入ってきた。でも、さっきから足元には双子が絡みついている。かわいい、思わず臭いを嗅ぐ。うんこをしていた。炒め物越しのうんこの臭い。

 娘が帰ってきた、妻が何やら喚いている。「またお弁当、残してる! 私はもう知らない!」。黙ってオムツを替える。腹が減った。炒め物が目の端に映る。さっきからテレビではレベルの高いお笑いが行われている、素晴らしい、でも、どちらかと言えば今は早く回鍋肉を食べたい。コンテストは「炒め物の匂いVS.レベル高いお笑い」になっている。レベル高いお笑いは疲れるから、回鍋肉にしとくか……。

 そんな私は今のこの地位が下がったお笑いをなんとかしたいと思っている。どうしたらいいのだろう? 教えてほしい。

AERA 2018年10月15日号

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