「多様な生き方を肯定する社会へと日本社会が変化し、若い世代の地方移住が増えています。個人の意思と、国や自治体の支援の方向性が一致し、『東京を出る』という選択肢がトレンドに浮上しました」

 とはいえ、東京への流入超過には歯止めがかかっていないのが実情だ。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングは今年6月、東京圏に居住する、出身地が東京圏以外の18歳以上を対象にした移住意向調査の結果を発表。この中で「転居したくないし、転居する予定もない」が55.4%と、過半数が東京圏からの移住を否定した。この傾向は50代以降が顕著だという。

 同社の大塚敬・自治体経営改革室長は「長男長女は地元に戻る傾向が強いという、従来の認識は調査結果には全く反映されませんでした。東京暮らしが長くなるほど人間関係も濃くなるので転居の意向が下がるのは必然とも思います」と話す。

 移住のネックとなるのが仕事の確保と収入減だ。収入減について許容できるのは「転居前と同水準かそれ以上」が50.4%、次いで「転居前の2割減までOK」が35.9%だった。

 沼田壮人主任研究員は「思い詰めて東京を離れるのではなく、一度地方に住んでみて、違うな、と思えばまた戻ればいい。ただ、そうした融通が利くのは若いうち。できれば40代前半までに決断すべきでしょう」と助言する。

 その上で「東京脱出」の意義についてこう話す。

「個人にとっての移住の意義は、多様な風土、暮らしに触れられること。志向の似た者ばかりが再生産される社会は健全ではありません」

(編集部・渡辺豪)

※AERA 2018年10月8日号

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