マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
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イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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「基礎」が大事だ。体力、学力はもちろんのこと、建造物は土台がしっかりしていないとどうにもならない。社会インフラなら下水道、化粧品ならファンデーション、あるいは、音楽の背骨はベースとドラム。それがあってこそ派手な装飾的アレンジ、扇情的で奔放なメロディラインという肉がつく。兎にも角にも物事の基本に当たる部分を疎かにしたらダメなのだ。チャラチャラと“ウワモノ”や“ガワ”ばかりを気にしていてはロクなものにならない。

 とはいえ、若い頃は基礎嫌いであった。

 私がまずその説教を聞いたのは剣道の先生からである。「基礎、基本が大事! 困ったり、悩んだりしたらそこに帰る!」と言われ、鼻血が出るほどつまらない素振りや基本的型の稽古をさせられた。まずこちらは、剣道自体が好きではなかったので、困っても悩んでもいない、だからそこに帰る必要がないのだ。嫌々やった挙句、自分の剣道がうまく修正されるようになっても尚私は、「これは基礎練習に帰ったからの結果ではない」と自分に言い聞かせた。そのぐらい私は基礎が嫌いだった。

 全ての手柄は自分。呆れるほど派手やかなテクニック&閃(ひらめき)きを叶えられるこの運動センスよ! 決して基礎のおかげではない!

 ところがどうだ。

 今や私は、明けても暮れても基礎、基本が大好物な人間になった。

 そして、その物差しを持って色々なことに当てはめては一人うっとりしている。あゝ愛しの「基礎」よ。若者からどんなに疎ましがられようが、煙たがられようが、基礎や基本という合理を押し付けようと思う。

 と、ここで、基礎好きが高じた私が編み出したある測定法を紹介しよう。食べ物屋で“実力測定”するならこれでそれを測れ!といったものである。言わば「店の基礎学力」がわかる。

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