原点はどこにあるのか。
「動物が好きで、幼稚園の頃から絵は描いていました。絵にキャラクターや物語をつけだしたのは、小学2年生くらいの頃。宇宙人も動物も恐竜も、一緒に暮らすというテーマで作っていた気がします」(板垣さん)
連載のなかで、大切にしていることがいくつかある。
毎回、ハイライトになるシーンを必ずつくること。
「連載開始時、『1話ずつ読み切りに相当する読み応えが必要』とアドバイスされたんです」
毎回、主人公が代わること。
「物語を大きく動かすのはレゴシ。だけど、毎回柱になるキャラは違う。『脇役はこう動け』ではなくて、『今回の主人公は君だよ』と、中に入り込んで動かしていく。現実でも一人ひとりが自分の人生の主人公でしょう。漫画も同じようにやらないと、いまの人の心には響かないんじゃないかって思うから」
出し惜しみをしないこと。展開は小気味よく速い。
「私がせっかちなせいもあると思うんですけど(笑)」
物語はずっと考えている。夜、仕事の合間の散歩や、スタッフとのやり取りの中にもヒントがある。重い話の回は、キャラの内面に自分が沈み込むように描くから、胃が荒れる。普段人と話し、ニュースに触れ、考えたことが密接に関わっている。
「動物漫画だけど、描いているのは人間だと思う」
板垣さんの語るプロットは、毎回、編集者を驚かせる。
板垣:レゴシがルイに、「決闘するので見に来てください」って伝えるために、裏市に行くんだけど、レゴシはシシ組にもマークされているし。
編集者:危ないよね。どうやって行くの?
板垣:女装していく。
編集者:ええっ。その発想は、なかったなあ。
レゴシの女装姿がハマるのか不安もあったが、あがってきたネームは「おもしろかった」。
板垣さんは漫画を描く日常を「刺激的」だという。子どもの頃から組み立ててきた世界観は、いまも構築中。彼女が紡ぐ物語が多くの人を虜にしている。(編集部・熊澤志保)
※AERA 2018年9月17日号より抜粋