高校の授業中に考えて同級生に見てもらったネタを持って劇場に行く。そんな日々だったんですけど、ある日、ネタは考えていたものの舞台に立ったら何も出てこなくて。
客席からは「頑張れー」という声があがっている。芸人が同情されるなんて一番あってはならないこと。心は完全にボロボロです。でも、それを見せてもダメなので、なんとか舞台袖に戻ってきてポップに「ごめんなさ~い!」と強がって、セットの裏に隠れてから思いっきり泣きました。そこに東野幸治さんがスッと来て言ってくださったんです。
「こんな狭い土俵で泣くな。お前はこれからもっと広いところに出ていくんやから、ここで泣いててどうすんねん」
こんな話をしたら東野さんは「そんなこと言うてへんわ」とごまかされるかもしれませんけど、今もその言葉は自分の心に大切にしまってあります。
あと、私が新喜劇に入った頃、新喜劇の若手リーダー的な立場だった今田耕司さんにも本当にお世話になりました。一つ例を挙げると、私がピン芸のノリで新喜劇の舞台でもすっとんきょうなことばかりやっていたので、ベテラン座員さんたちに怒られたんです。
今から思えば、お芝居も何も知らずに自分が面白いと思う変な動きばかりをする。そりゃ、ダメなんですけど、その時はかなり怒られまして。それを見た今田さんがそこに来て、それまでベテランさんが怒っていたよりもはるかに強く私を怒鳴りつけたんです。
周りの方もビックリするくらいの怒り方で、今田さんがそこまで怒っているのでもう周りの先輩もそれ以上怒ることなく場は収まったんですけど、その直後、今田さんが舞台袖のカーテンをクルッと巻いて私と二人の空間を作っておっしゃったんです。
「ごめんな。オレがあそこで怒ったら、もうそこで終わると思って怒鳴ったんや。ホンマは全く怒ってないから。これからも思ってる通りにやったらいいし、オレが全部つっこんだる。だから、思いっきりやったらエエねん」
こんな話をしだしたら、本当にキリがありません。亡くなってしまった亀山房代姉さんからはこれでもかとやさしい言葉をいただきましたし、末成映薫姉さんには毎日のようにご飯に連れて行っていただき、浅香あき恵姉さんからは新喜劇における“かわいげ”の大切さを教わりました。