安室奈美恵の引退も目前、平成が終わろうとしているいま、大ヒット作「モテキ」を手がけたコンビが1990年代の“コギャル文化”を描いた。あの時代が現代に語りかけるものとは。監督を務めた大根仁氏と映画プロデューサーの川村元気氏が対談した。
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──公開中の映画「SUNNY 強い気持ち・強い愛」は2011年に韓国で公開、日本でもヒットした韓国映画のリメイクですね。
大根仁:僕はオリジナルのファンで、劇場に3回は観に行ってるんです。最初は「リメイクをやるつもりはない」と断ったんですよ。というか、川村さんからくる話は、いつも最初は断っている。
川村元気:ははは。
大根:「モテキ」も「バクマン。」も「無理無理!」って。でも話をしてるうちに「やれるかも」と思えてくるのが川村さんの詐欺師……いや、名プロデューサーらしいところかなと(笑)。
──現代を生きる主婦(篠原涼子)が同級生との再会をきっかけに、1990年代を生きた高校時代の自分(広瀬すず)を思い出していくストーリーです。
大根:日本を舞台に「サニー」をやるなら90年代のコギャルの時代にするしかない、と。そうしたら現実に安室奈美恵さんの引退があったり。もしかして川村さん、知ってたの?
川村:もちろん知らないですよ!(笑)。でもあの時代をエンターテインメントにしたい、という気持ちはずっとあったんです。それにいま90年代がまた盛り上がってきている。若い人が「写ルンです」で写真を撮ったり、ルーズソックスをはいていたり。やっぱりいまがこれをやるべき時期だったんだなと。
大根:川村さんは79年生まれで、もろ“コギャル世代”の現役でしょ? オレは68年生まれだから、当時をちょっと俯瞰して見てたけど。
川村:僕はコギャルが怖かったんですよね。茶髪でダボダボのルーズソックスをはいてる同級生とか怖くて。でもどこかで「あの時代って、なんだったんだろう」と決着をつけたい思いもあった。
大根:バブル崩壊後、世の中が閉塞していくなかで、女子が「もう男に頼っていられない」っていう意思表示をし始めた時代だったんだよね。若い子たちが一番敏感にそれをかぎ取っていた。
川村:いまの女子高生たち、コギャルを演じるの、大変だったみたいですね。
大根:撮影現場ではオレ、演劇部の鬼顧問状態。「もう一回!」「なんでできねえんだよ!」って(笑)。いまの子はあの時代の女子の“テンション”をキープするのが難しいらしくて。
川村:この映画、おじさんが泣きながら試写室から出てくるんですよ。
大根:オリジナル版「サニー」の劇場でもそうだった。
川村:映画に彼女たちの同世代の“男子”は出てこないんですよね。大根さんや僕のような男たちが、あのときの女子をどう見ていたか、という目線になってる。だから逆に男性のほうが当時の気持ちを思い出して、あの時代に没入して、感情移入して泣いちゃうのかもしれない。