●離党する覚悟で戦って

 前出の鈴木さんが続ける。

「石破氏が地方票の半分をとれれば国会議員票と合わせ全体の4割近くとなり、安倍圧勝とは言えない。総裁任期は党則で3期9年まで。安倍首相は3選してもレームダック化する。公明党の反対で来夏の参院選まで憲法改正に着手できず、そこで負けて安倍退陣となれば、今回の総裁選の結果次第では一気に石破総理誕生もあり得る」

 石破氏は8月10日、すでに総裁選への出馬を表明している。政策論戦に持ち込みたいが、

「テレビ局が討論会を申し込んでも、首相陣営は『まだ出馬表明していない』と断っている。総裁選は自民党内のもので、討論会を何度も開催することに否定的だ」(永田町関係者)

 石破派の議員は「外交や社会保障など各テーマで少なくとも2時間は議論したい。石破会長は政策論争に絶対的な自信がある」といら立ちを隠さない。

 石破氏が石破派(水月会)の結成を表明したのは、前回の総裁選で安倍首相が無投票再選を決めた翌日のこと。石破派の平将明衆院議員は「石破派を作っておいてよかった」と話す。

「下手すればまた無投票再選の可能性もあった。自民党総裁選は総理大臣を決める選挙。自民党支持、不支持にかかわらず、広く国民に向け、候補者の政策や考え方を伝えるべきだ」

 出るからには勝たねばならない。石破氏は出馬会見で「正直、公正」な政治姿勢を主張したが、政治評論家の森田実さんは、

「この言葉は森友・加計学園問題を巡る安倍政権の対応を指すのは明らかだ。はっきりと、安倍政治のウソに反対するなどと言うべきだ。負けたら最後、離党する覚悟で戦ってほしい」

「安倍圧勝」という報道が目立つ。石破派議員の一人は、

「安倍圧勝。石破派は選挙後に壊滅と書いといてください」

 相手は緩んだままがいい。いわば「負けたふり作戦」とでも言うべきか。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年9月3日号

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