翁長氏は沖縄の保守政治家一家で育ったサラブレッド。対照的な生い立ちだが、2人はともに「戦後沖縄」を体現しているようにも映る。玉城氏は言う。
「翁長知事はかねてから僕のことを話題にするとき、『デニー君も戦後の沖縄を背負って、いろいろ難儀してこられたんだろうなあ』というふうなことをおっしゃっていたらしいです」
中央政界で小沢一郎衆院議員と行動を共にした玉城氏は、14年の衆院選で「オール沖縄」の推薦候補(生活の党公認)となり、翁長氏が応援に駆けつけてくれるようになった。玉城氏が共感したのは、14年の知事選で翁長氏が掲げた「イデオロギーよりアイディンティー」という旗印だ。
「保革を乗り越えてイデオロギーは腹八分、六分にして取り組もうと。保守の政治家でこんなことを言う人は、小沢一郎以外に聞いたことがない」
玉城氏は、保守政治家だけれども中央集権型の保守政治家ではなかった、との「翁長評」も挙げる。沖縄の歴史と先達の努力に敬意を払う、そのための保守でなければならない、という翁長氏の姿勢に打たれたという。
沖縄市議当時、玉城氏は『沖縄タイムス』のインタビューに「私自身は、保守だ、革新だというスタンスではなく、是々非々で行動している」と説明。「保守系は生活者の視点」「革新は論者の視点」と指摘している。
中央政界を渡り歩いた今の立ち位置を問うと、「真ん中かもしれませんね」と答えた。
■遺志受け継ぐ覚悟
玉城氏は、「米軍を早く沖縄から出すには、自衛隊の配備も必要になってくるかもしれない」と見る。しかし、沖縄の先島で進む自衛隊配備についてはこう批判する。
「丁寧に協議し、地元の理解を得るのが必要。国が先島でやってきたように地元との協議も踏まえず、基地を造成し部隊を駐屯します、というやり方は自衛隊にとっても迷惑。こんなことをやっている民主主義国家はない。それが、『保守』でもある自分には許せないわけです。革新の皆さんは『基地反対』と言いますが、その前提は違うんです」
「革新」との立ち位置の違いもにじませつつ、「保守」の現状にも違和感を隠さない。