物資支援は現地のニーズを把握しながら行われている=7月10日、大阪府・堺泉北港で、府市長会などからの支援物資を積み込む国土交通省の職員ら (c)朝日新聞社
物資支援は現地のニーズを把握しながら行われている=7月10日、大阪府・堺泉北港で、府市長会などからの支援物資を積み込む国土交通省の職員ら (c)朝日新聞社
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おもな義援金の振込先と支援情報(AERA 2018年7月23日号)
おもな義援金の振込先と支援情報(AERA 2018年7月23日号)

 西日本豪雨被害がさらに拡大している(12日現在)。広範囲に及ぶ被災地支援も全国で広がるが、物資支援という「善意」が、現場に混乱を招いているという。

【おもな義援金の振込先と支援情報】

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 すでに、被災地の一部にはモノがあふれている。今回の豪雨災害に際し、岡山県倉敷市の被災地区・真備などで活動した、支援団体「災害NGO結」代表の前原土武(とむ)さんは言う。

「個人の方が、車に物資を満載にして避難所へやってくる。水もパンも充分にあるが、避難所の住民さんは『いらないとは言えない』と困惑しています」

 前原さんによると、報道が少なく物資も届きづらい四国などの一部地区では生活用水にも事欠く一方で、メディアで注目された避難所などを中心に、大量の物資が集まり続けている。

●被災地襲う第2の被害

 地震を経験した熊本市の大西一史市長もこう振り返る。

「被災自治体にとって、支援のお気持ちは大変うれしくありがたいものです。ただ、熊本地震後の本市にも大量の物資が届きましたが、人員体制もままならない状態で対応できず、かえって現場は混乱してしまいました。被災者のニーズも刻々と変化します。その結果、ご厚意でいただいた貴重な物資を活用できないまま、ストックとして抱え込むことになってしまいました」

 近年の災害では、常にこの「物資問題」が持ち上がる。いまや、個人からの救援物資は「被災地を襲う第2の災害」とまで言われるほどだ。

 とはいえ、その行為のほとんどは純粋な善意によるもの。気持ちを生かすためにはどうすればいいのか。各地の災害支援に従事し、物資支援の方法についても発信を続ける、NPO法人レスキューストックヤードの栗田暢之(のぶゆき)代表理事は言う。

「モノの場合は、直接の知り合いや受け入れを表明している団体など、ニーズが明らかで顔の見える相手に、“すぐに”“必要なものだけを”“仕分けやすいように”送ることが大切です」

●支援団体へ寄付も有効

 発災直後は、モノ不足ではなく、物流が滞ったために届かないだけ。また、SNSに「◯◯がほしい」という書き込みがあっても、数日後には不要になっていることはザラだ。種類も質も量もバラバラで、仕分けに人手がかかる個人からの物資は不良在庫となり、支援活動の妨げにさえなることもあるという。「ならば」と栗田さんは続ける。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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