日本初の公立中高一貫校は、宮崎県の五ケ瀬中等教育学校。1999年に施行された改正学校教育法を受け、同年に産声をあげた。2017年時点で全国に208校があり、質の高い教育で高い大学実績をあげている学校もある。
17年に開設したのが、横浜サイエンスフロンティア高校附属中学(横浜市)だ。母体となる高校は09年開校。校名にサイエンスを標榜する、ハイレベルな教育を行っている。
校内を歩いて目を引くのが本格的な設備だ。生物の微細構造や分子レベルの物質の解析ができるSEM(走査型電子顕微鏡)を備えた電子顕微鏡室、無菌操作エリアを設置した環境生命実験室などがそろう。
物理の教室。授業はゼミ形式で、4人の生徒が研究の中間発表を行い、他の生徒が意見を述べたり、教員がアドバイスしたりする。複葉機をテーマに選んだ女子生徒は飛行機に興味があり、一度廃れてしまった技術を応用して新しい技術を開発したいという。パラシュートをテーマにした男子生徒は、開く時、外側に生じるカルマン渦をなくし、衝撃を和らげる構造の研究に取り組んでいる。子どもの頃から続けている野球をテーマに選びアッパースイングをするとなぜ長打になるのか、ボールに対するバットの入射角を計算し、モデルを作って検証している男子生徒も。岸本昂大さんは趣味を生かし、操作性の高い競技ヨーヨーを研究中。試行錯誤を重ねながら、教室に備えてある3Dプリンターを使って実物を製作している。
生物の教室では、長野陸さんが、麹菌の培養に取り組んでいた。二つのコロニーがぶつかり成長が抑制されると麹菌にどんな影響があるか仮説を立て、検証中だ。榎元椿さんはニュースでクラゲの大量発生を見て、テーマに設定。ポリプからクラゲを発生させてその条件を探っている。「発生の条件がわかれば、その環境を抑制してポリプのままで終わらせ、大量発生を防ぐことができる」と話す。
2年次の研究は英語に訳し、海外研修で訪れるマレーシアの協定校で発表。国語や英語の授業でも、少人数授業で論理の立て方や記述力、英語でのプレゼンテーション能力を鍛えている。
「本校は、全員が科学のスペシャリストになることを目指しているわけではありません。この学校で培った能力を生かして、社会に貢献する人材を育てること。それが本校の使命だと思っています」(栗原峰夫校長)
18年度の進学実績は東大を始めとする国公立大学に128人が合格。北海道から沖縄まで、35大学と幅広く国立大を受験しているのが特徴だ。前期で失敗しても、粘り強く後期でチャレンジする生徒も多いという。
宮城県仙台二華中学・高校(仙台市)は、自然豊かな環境を生かした教育活動が特色だ。