なお2023年はじめに、オライリー教授宛に恒例の近況報告メールを送り、アジャイルエナジーXの設立について報告した。すぐに返信が届き、2022年発行の著書『Corporate Explorer』(邦題:『コーポレート・エクスプローラー 新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則』、英治出版・2022年)のテーマそのものであり、是非詳しく話が聞きたい、と喜んでくれた。
■今後の展望:アンチ・フラジャイルなエネルギー基盤の構築と人材育成
先進国のなかでもエネルギー自給率がきわめて低い日本は、元々エネルギー基盤が脆弱である。それに追い打ちをかけるように、世界的なエネルギー危機が発生している。日本のエネルギー基盤を支えるうえで重要な役割を担っている東京電力グループに、GSBの起業家精神を注入し、内側から変革すべく、筆者はGSB卒業後18年以上にわたり各種取り組みを推進してきた。この度、アジャイルエナジーXという新たなプラットフォームを用いて、これまで以上に大胆に戦略を立案し、実行に移せる状況となった。会社設立にあたり、陰に陽に協力していただいた社内外の関係者に、この場を借りてお礼申し上げたい。
再エネや原子力を含むクリーンエネルギー源と、分散コンピューティングをはじめとする柔軟な電力需要を組み合わせることで、GX(Green Transformation)とDX(Digital Transformation)を融合させる。さらには、分散コンピューティングに国内半導体技術を採用することで、日の丸半導体産業の復活にもつなげるとともに、金融をも取り込んだ、日本発のイノベーションの潮流を生み出す所存である。VUCAの時代にこそ一層強靭となるような、アンチ・フラジャイルなエネルギー基盤の構築は、国家百年の計という発想で長期的視座に基づき、取り組むことが必要である。そして、それを可能とするのは人材である。
筆者は、東京電力社内で「熱く語る会」と称する、課外活動としての勉強会をGSB卒業以来継続的に開催してきたほか、社外では、産官学連携の原子力人材育成ネットワークや宇宙太陽発電学会等のセミナーやさまざまな大学での講演を頻繁に引き受けてきた。たとえば、原子力人材育成ネットワークでは、日本の原子力産業を復活させるべく、『日の丸原子力「捲土重来」戦略』と称して、次の大胆な提案を行った。