

タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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先日、AERAのイベントで野田聖子総務大臣と対談しました。霞が関と永田町とメディアの仕事は超ドメスティックでセクハラ対策が遅れている、という野田さんの指摘に頷きました。
グローバル企業では常識になっているセクハラ対策も、永田町や霞が関やメディア業界では立ち遅れ、意識は古いまま。この三つの分野で女性幹部を増やし、体質を変えていくことが必要だというのはもっともです。
衆議院の女性議員はわずか1割、参議院でも約2割。ようやく候補者男女均等法が施行されて一歩前進ですが、まだまだ足りません。
そういえば、先日参加したオランダで開かれたニュースオンブズパーソンの会議でこんな話を聞きました。フィンランドから来た男性いわく、彼がオンブズパーソンを務めている新聞社では、働く人の7割が女性で3割が男性なのだとか。これでは多様性に欠けると問題になっているのだそうです。なんで女性が多いの?と尋ねると「優秀だから」。するとカナダの放送局のオンブズパーソンも、その放送局の幹部12人のうち9人が女性だと言うではありませんか。ええっ、夢の国ですか?と耳を疑いました。
日本のメディア企業で働く女性の数は年々増加しているものの、最も多い民間放送局でも2割ほど。管理職の女性は民間放送局で13.1%、NHKは6.1%、新聞・通信社は5.1%(2016年版男女共同参画白書)ですから、超少数派です。
女性を増やせば意見に多様性が出るというのは一見正しいですが、滅私奉公の価値観に適応した女性だけを集めても意味がないですよね。それに、働く女性が増えたと言っても今は非正規が大多数。大事なのは柔軟な働き方が可能な正社員を増やすことです。子育てや介護をしている女性は両立に悩んできたけれど、同じ悩みを抱える男性はこれからもっと増えるはず。女性を増やすことは女性だけの利益のためじゃないってことを、もっと多くの男性にも知ってほしいなあ!
AERA 2018年7月2日号

