実際にポンペオ米国務長官は米朝首脳会談の翌13日、訪問先のソウルで、完全非核化を「2年半以内の実現に期待している」と述べ、「徹底した検証作業が行われることを北朝鮮は理解していると確信している」と自信を見せた。これはトランプ大統領の任期が終わる21年1月までの完全非核化を意味し、2期目に向けた20年11月の大統領選でも大きな業績として強調できるため、一石二鳥だ。それに至るまでの具体的な工程を米朝間で協議し、2回目の米朝首脳会談で合意、発表できるかが大きな焦点となる。
「70年前、朝鮮半島で多くの血が流れる対立が起きた。休戦は合意されたが、戦争はいまも終わっていない。ただ、それは近く終結することになるだろう」
トランプ氏は記者会見で、そんな見通しを示した。戦争終結に向けた交渉では、北朝鮮に加え、中韓とも協議すると約束。平和条約の締結プロセスがどんな形になるのか専門家でも意見が分かれるが、休戦協定に署名した米朝中に加え、韓国も参加して協議されることになるだろう。4月27日にあった南北首脳会談では年内の戦争終結を目指すことで合意済みだし、中国も非常に前向きだ。あとは米国さえ合意すれば、この歴史的偉業の実現が近づく。まさにトランプ氏の決断次第なのだ。
過去、何度も約束を守らずに来た北朝鮮に対し、国際社会の不信感は根強い。米国が期待する2年半以内の完全非核化に同意できるのか。完全非核化の約束を今回は誠実に履行できるのか。米朝間の今後の交渉が難航し、中間選挙までに具体的な成果を出せないとなった場合、トランプ氏の熱意が一気に失われる危険性は常にある。対立への逆戻りはないと楽観視するにはまだ早い。そんな不安がちらついたのか、トランプ氏自身も記者会見で、こう漏らした。
「彼(金氏)は必ず約束を守ると思っているが、私が間違っているのかもしれない。その時は6カ月後に、間違いを修正するための言い訳を何か考えるよ」 (編集部・山本大輔)
※AERA 2018年6月25日号より抜粋