野球人口の減少を食い止めようと、さまざまな活動が始まっている。かつての「野球少年」たちが伝えたいのは、野球というスポーツが持つシンプルな楽しさだ。
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何を見て来ましたか?
「ジモティーです」
「フェイスブックを見ました」
服装自由、道具はなくてもOK、試合なしのキャッチボール。1回2時間で500円──こんな野球サークル「東京キャッチボール」が、2017年1月発足した。メンバーはインターネットで募集。活動はほぼ月1回、週末で、毎回定員はいっぱいになる。
取材を始めた2月の活動場所は、サンシャイン60(東京都豊島区)をのぞむ豊島区総合体育場。活動開始の10時少し前になると、14人の参加者が三々五々集まってきた。ほとんどの人が初対面だ。この日初めて参加した男性(43)は言う。
「子どものころ、よく野球で遊びました。でもいまはキャッチボールをしたくても、できる相手も場所もない。近所で壁当てをするしかありません。東京キャッチボールの活動を見つけたときには、“我が意を得たり”と思いました」
準備運動の後、ペアを組んでキャッチボールを開始。ひとけた台の気温だというのに20分もすると、参加者の額に汗が浮かぶ。キャッチボールを終えると、さらにバッティング、守備練習と続く。しかし、ゲームをしなくても楽しいものなのか?
埼玉県から1時間かけて参加したという男性(34)は言う。
「野球をするのは学生時代以来、久しぶり。気持ちいいですよ。野球好きの人たちとキャッチボールできるだけでも楽しい」
とはいえ、社会人であれば草野球チームがたくさんありそうだ。そうしたところでキャッチボールはいくらでもできるのでは……? 実はそこに大きな“ミスマッチ”があると主宰者の大森大輔さん(40)は言う。
「草野球は練習なしで、試合だけというところが多いんです。しかも学生時代に本格的に部活でやってきた人たちがメイン。だから子どものころ野球で遊んだ、野球好きの人たちがやりたいと思っても、技術レベルやノリが合わず、うまくいかないケースが多い」