最近話題になっている「中年童貞」に「中年処女」はどうか。国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第15回出生動向基本調査」(15年)によれば、男性の童貞率は30~34歳が25.6%、35~39歳は26%。女性の処女率は30~34歳が31.3%、35~39歳は33.4%。30代男性の4人に1人、女性は3人に1人が「未経験」だ。
「理想の男性を探していたら処女のままでした」(38歳、会社員女性)
先の西郷さんも、30歳を過ぎてからの童貞またはバージンの相談が多いという。
男性の場合は「一生童貞は嫌だから、このままではいかんと思うが、もう40代になってしまった、どうしよう?」、女性は「未経験だけど、抱かれたいと思う男性がいない」という悩み。
西郷さんは、「中年処女」が増えた要因の一つは「この人とはしたい」「この人とはしたくない」という“性欲に自覚的”になってきたことではないかと見る。その結果、スペックがいい男性にも「雄を感じない」「そもそも触られたくない」「キスをしたくない」と思うようになってきたのではないか、と。
「そのこと自体はいいことですが、それがいつまでもセックスできないという新たな悩みとなっているのだと思います」(西郷さん)
最後に、「子づくりのための性行為での悩み」を、アンケートから見てみたい。
目を引くのは、20代男性の過度な「子づくりプレッシャー」だ。「妻からの一方的な性交渉圧力がつらい」「生殖目的のセックスで、快楽を感じなくなってしまった」がともに50%。
「今日やらないといけないというプレッシャーがすごい。チャレンジするけど、勃たなかったことも何回かある」(20代後半、会社員男性)
晩婚化によってこれまでこうした「排卵日ED」は30代、40代に多いといわれてきたが、20代にも広がっているようだ。
先の大川医師は、「妊娠はセックスの結果」という単純な関係が主客転倒しているという。不妊治療をしている人が月1回の性交に集約していきがちなように、妊娠を目的にするとセックスは楽しみではなくなると話す。
「子づくりには多少の知識も必要ですが、人間のセックスは生殖を離れて楽しむのが特徴です。さらに楽しくするためには、男女双方から平等で自然なセックスができるようになるのが目標と言えます」
セックスとは触れ合いの象徴だ。見つめ合うことも、抱き合うことも、キスすることだってセックス。時間がかかるかもしれないが、少しずつ悩みを解消しよう。(編集部・野村昌二、中島晶子)
※AERA 2018年5月28日号より抜粋