

ファンタジーのふりをした残酷物語だという。放送作家の鈴木おさむさんが映画「ラブ×ドック」で監督デビューを果たした。ヒロインは、女性から圧倒的な人気を誇る吉田羊さん。お二人に作品の裏話を語ってもらった。
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鈴木おさむ:脚本を書き終えた後に主人公を考えたんですが、難しいなと思いましたね。30代後半から40代を演じられる女性で、しかもコメディーができて。
吉田羊:独身で(笑)。
鈴木:そう、それ大事なんですよ(笑)。考えていたら「あ、羊さんがいる」ってひらめいた。
吉田:勇気のある人だと思いました。吉田羊主演で恋愛映画を撮るなんて、当たると思っているの?って(笑)。でも、アラフォーの恋愛作品というと一般的にドロドロの不倫劇ですが、「ラブ×ドック」は違います。ファンタジーで恋愛をオブラートに包み、エンターテインメントに仕上げている。見事な脚本だなと思いました。
鈴木:恋愛映画をやりたいという思いはあった?
吉田:ご縁のないものだと思っていたので、人生経験の一つのつもりでチャレンジしました。私が演じた剛田飛鳥さんには共感できるところはいくつもありました。「人生に無駄な恋なんてない」は映画のテーマでもありますけど、私自身、恋に限らず人生に無駄なことはない、と思っています。飛鳥さんの魅力は不器用ながらも、正直なところだなと思ったので、飛鳥さんとの共通項をきちんと自分に取り入れて演じました。そこをリアルに演技することで彼女の正直さが伝わればいいなと。
鈴木:日本のエンターテインメントでいつももったいないと思うのは、アラサーからアラフォーの恋愛ものが少なすぎること。ハリウッド映画だとたくさんあるのに。例えば、「ニューイヤーズ・イブ」(2011年)という映画。羊さんに見てほしい。群像劇で、その中の一つのエピソードに、ミシェル・ファイファーとザック・エフロンが出てくる話があるんです。実はそれが「ラブ×ドック」の元ネタ。年の離れたファイファーとエフロンでこれを作ってしまうというのがすごくいいんですよ。
吉田:見てみます!