斉藤さんはこの加害者一人の一審で専門家証人として出廷しているが、その特性をこう語る。

「加害行為の大半は、報道により明らかになっていますが体験型のキャンプに参加した際のものでした。どこで自分の欲求を満たせるか、加害者は抜け穴を探しますから、網をかけきるのは困難です。どんな完成度の高い仕組みや制度をつくっても、いたちごっこは避けられません」

 子どもへの性加害者は、外見上「いかにも変な人」というタイプはほぼいない。子どもと関係をつくるスキルにたけていて、親や同僚からも信頼されている人が多いという。上司や同僚が見抜くのは不可能に近い。

「一番の対策は人員を増やし『人の目』を意識させることですが、人件費の問題からそれが難しい職場も多いでしょう。可能な限り死角を減らすこと。死角を中心に防犯カメラやセンサーを設置するなど、テクノロジーを用いることも重要です」

 イギリスには教員などの犯罪歴を確認する制度「DBS」があるが、こども家庭庁は子どもと関わる仕事に就く人を対象にした「日本版DBS」の導入に向け動いている。ただし、このDBSや先の「わいせつ教員対策新法」などは、あくまで再犯を防止するための仕組みにすぎず、初犯を防ぐのが難しいのも事実だ。

 それでも、斉藤さんはこう指摘する。

「日本版DBSをつくったほうが良いのは間違いありません。加害者を一人でも減らすために、対象を広げたうえで早期につくる必要があります。また、世間やマスコミは加害者に判決が下るところまでしか関心を持ちませんが、再犯を防ぐためにはその後のほうが大事なのです。出所後も対象者を治療につなげ、どう社会復帰させていくか。そこにこそ国はマンパワーと予算をかける必要があると強く思います」

 卑劣な犯罪にあう子どもを一人でも減らすために、目を向けなくてはならない大きな課題である。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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