なでしこジャパンは、強かった時代も決して華麗なサッカーをしていたわけではなく、耐えしのぎ、少ないチャンスをモノにすることで結果を出してきた。

 もちろん、来年のW杯、さらに2年後の東京五輪を見据えれば「このままでは勝てない。もっと個を伸ばさないといけない」(阪口)と厳しい口調だった。

 高倉監督も「粘り強い戦いができたことでチームとして一歩進んだ」とした上で、「まだ道の途中。世界で戦うには、プレーや判断スピードを上げなければ」と課題は多いと口にした。

 高倉監督の就任後は若手が多く登用されるも、ベテランとの融合が思うように進んでこなかった。だが、大会を勝ち抜くことでチームに一体感が生まれたのは今後に向けて好材料だ。

 決勝でともに先発フル出場したMF長谷川唯(21、日テレ・ベレーザ)とDF清水梨紗(21、同)は、いずれも女子大生なでしことして、チームの主力となりつつある。

 2月末に代表デビューしたばかりの清水は160センチ、47キロと細身ながら粘り強い守備と豊富な運動量で、DFに定着。テクニックに長ける長谷川は、もはや中盤に欠かせないピースとなり、決勝では巧みなトラップからのラストパスで横山の決勝ゴールをアシストしている。

「1試合目と比べると、決勝では自分でもわかるくらいチームが成長しているのを感じた。まだチームの中心とは言えないが、大会を通して自分の持ち味は発揮できたので、今後はチームを勝たせることのできる存在になれたら」(長谷川)

“らしさ”を取り戻したなでしこジャパンに、若手の台頭は、完全復活への後押しとなるか。来年のW杯に向け、楽しみが増したことだけは間違いない。(スポーツライター・栗原正夫)

AERA 2018年5月14日号