ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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さて、今週はいよいよプロ野球が開幕であります。
我が広島カープは2連覇後も目立った補強をしておらず、あくまでも自前の戦力を鍛え上げる、まさに地域経済の鑑のような存在であります。地方創生というと、すぐにインバウンドとか言い出して、やれB級グルメだとか、ゆるキャラだとか、日本全国で同じことをやり始め、結局、消耗して赤字だけ残るわけです。しかしながら、我々が岩手県紫波町の「オガール」で徹底的に考えたことは「地元のカネをいかに外に取られないか」という一点に尽きる。
インバウンドはその後の話であり、岩手県の人のカネが東京資本にガンガン吸い上げられている(イオン、イトーヨーカ堂も含め)現状を改善することが先決だということ。ある意味、地元の人がいいなと思う地元ブランドがあれば、地元の人はそこでお金を使うわけです。
しかし、オガールよりはるかに早くこれを実行していたのが、カープということになる。集客、売り上げの数字もすさまじい。昨年71試合で集めた観客数が217万7554人(4年連続でプラス)、広島におけるテレビの平均視聴率は31.4%を叩き出し、売り上げは188億円を突破、これは4年連続の過去最高更新であります。この数字のすごさは2007年にはわずか60億円しかなかった売り上げがリーマン・ショックをものともせず、10年かけて3倍になったという点です。
多くの経営者が売り上げ低迷を「リーマン・ショックで……」なんて言っていたわけですが、カープの数字を見ると、もうこれは恥ずかしい。最も苦しいと言われた10年で売り上げ3倍という結果は、市民、県民のとんでもない力に支えられているといっても過言ではありません。そのハブにカープがいるわけですね。
※AERA 2018年4月2日号