


ニクソン大統領もお気に入りだったという、カナダの女性画家モード・ルイス(1903-1970)。その驚きの人生をアイルランド人監督が映画化した。
【映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」のワンシーン】
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1903年、カナダに生まれたモード・ルイスは、若年性関節リウマチを患い、手足に不自由があった。両親を亡くした後、叔母の家に身を寄せて孤独に暮らしていた彼女の才能が開花したのは、35歳のとき。町外れの小さな小屋で一人で暮らしていた男性エベレットの家政婦になったのだ。その後、二人は結婚しその家で暮らし始める。
モードは家の壁や窓などに自由に絵を描くことを許された。そして夫が彼女のポストカードを売り出したことで、その絵が評判を呼ぶようになる。
アシュリング・ウォルシュ監督は脚本を読んで、特に二人の関係に惹かれたという。
「映画はほぼ史実に基づいています。二人は地域から浮いた存在でした。実際にモードは近所の子どもたちから石を投げられたりしたし、エベレットも口減らしのため孤児院で育った孤独な人だった。でも二人は、お互いを見つけ出すことができた」
65年にカナダ国営放送CBCが二人のドキュメンタリーを放送し、一気に知名度が高まった。それでも夫婦は生涯を小さな家で過ごした。家はいまハリファックスにあるノバスコシア美術館に常設展示されている。
「あの家自体が、彼女の最高傑作だと思う。まるでメキシコシティーにあるフリーダ・カーロの家のようで、『これこそがアーティストの創造が詰まった空間!』と感慨深かった」
フリーダ・カーロもまた肉体的な不自由に苦しめられながら創作に全身全霊を傾けた人だ。
「私はそういう人物に興味を惹かれるのかもしれない。ただフリーダの作品には自らの苦しみや痛みが切り取られているけれど、モードの絵にはそれが一切ない。カラフルで幸せそうで明るい。そこが彼女の絵の魅力ね」