

2020年度から導入される「大学入学共通テスト」。英語は「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能で評価になり、民間試験の成績を世界標準のCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に対応させ段階分けする。4技能テストの活推進派である東進ハイスクール講師・安河内哲也さんと、慎重派の東京大学高大接続研究開発センター長・南風原朝和さんが、激論をかわした。
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安河内:私としては数年でも延ばしてほしくない。また、CEFR対照だけでなく「TLU」(Target Language Use=対象使用言語領域)と「測定可能範囲」を理解した上で使うことを提案したい。英語の試験は作成するときにTLUを設定します。そしてCEFR測定可能範囲、つまりレベルにあわせてTLUの語彙の中から問題を作成する。いま並んでいる七つの試験は、TLUがばらばら。TOEICはビジネスだし、英検やGTECはジェネラル。TOEFLiBTやIELTSはアカデミック。それぞれかなり違いがあります。大学はどの学部でも同じ試験を使うのでなく、各学部で要請されるTLUにあわせて試験を選ぶのがいいと思います。
南風原:TLUと関係しますが、アカデミック分野での最近の学生の英語力に関して。教養学部の先生方に聞いたのですが、読解力が下がっていると言う。文法の用語も教わっていない。論文を読むときには、構文を読みきらないと正しい解釈ができません。もちろんそれは大学で鍛えていくのだけど、スタート段階が以前に比べて劣っていると。
安河内:私は必ずしも読解力が落ちているとは思いません。読解力にもいろんな側面がある。難しい英文の細かい部分を判読する読解力は下がったかもしれないが、重要なポイントを検索する能力、論理性を捉えて全体の骨子を見抜く能力、全体を速く読んで処理する能力といった総合的な力は上がったのでは。